★★★sahara★★★
モロッコの祭り・行事
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アル・イード・カビラとは

 断食明けのイード・アル・フィトルとならぶ、イスラム教の大きなお祭り。
イブラヒムが神の命令に従って自分の息子をいけにえに捧げようとした時、天使が現れて羊を与えた事を記念して行われている。

本来はメッカ巡礼の儀式の一つで、悪魔の誘惑を退ける為に3本の柱に7個づつ石を投げるが、その1本目の柱に石を投げた後に、動物を1匹いけにえにするらしい。余裕のあるムスリムは、この日に動物をいけにえにして、家族、親戚が集まって食事をし、貧しい人々にも分け与える。いけにえとしては主に羊が使われている。日本では犠牲祭として知られているし、モロッコでは断食明けのお祭り、イード・アル・フィトルをアル・イード・サヘラ(小さい祭り)と言い、犠牲祭をアル・イード・カビラ(大きい祭り)と言う。私の経験ではこの言葉通り、断食明けのお祭りよりも大きくて盛大な印象を受けた。


準備

 1月(2003年)の終わりから、食器棚になおしてある食器、台所にある鍋類、棚の中などの掃除を何日かに分けてやり始めた。もうすぐ犠牲祭だからだと言う。いつ?と聞いたら、多分2月12日か13日。誰に聞いても、多分12日ぐらい。というような曖昧な返事。月の満ち欠けでいつがその当日になるのかは、ぎりぎりまで分からないらしい。それでもソファーのカバーもクッションもいつもより豪華な物に取り替えてはっきり分からない当日に備える。

 2月3日の朝、メーメー鳴きながら、羊が我が家に登場。屋上へ連れて行き、餌を与えて美味しく育てる。
9日、違う町に住んでいる兄弟一家が久しぶりに帰って来て家の中は大賑わい。

10日からお菓子作りも始まった。5種類のクッキー、スポンジケーキに菓子パン、こねて伸ばしてたたんで切って揚げる手の込んだお菓子も。家にいる女性みんなで朝から夜遅くまで、普段の掃除やご飯の支度の合間に大量に作るから結構大変。
今日、家族の何人かは断食をしていた。理由を聞いたら、メッカの人たちが明日犠牲祭に入るかららしい。分かったような分からないような答え。
11日、お隣のアルジェリアでは今日が犠牲祭らしい。
午前中に知らないおじさんがやってきて、何だか少し慌ただしい雰囲気。何と今から羊を屠ると言う。明日だと思っていたからびっくり。従兄弟の男の子も手伝いにやってきて、皆屋上に集まる。


 屋上にビニールシートを敷いて、羊を押さえる。
それからは、あっという間の一瞬の出来事だった。おじさんがナイフを持ってちょっと横に動かしたかと思ったらすぐに後ろに飛びのいて、えっ?!と思っている間に羊の喉元から少し血が飛び出していた。少し、と言うのは、私の想像ではすごく沢山の血が吹き出るものかと思っていたから。
数十秒後に羊の後ろ足が小刻みに震え出して、前足を大きくばたつかせて暴れ出した。羊の向きが180度変わってしまうぐらい暴れているのを見守っていると、急に静かになった。
何となく目を背けてしまうんじゃないかと思っていたけれど、全然残酷だなんて思わなかった。ごく自然の、当たり前の事が今目の前で行われただけ、という感じがした。

 後ろ足の内側に切り込みを入れて、羊の体内に空気を送り込む。その後、お尻の辺りからナイフを入れて皮を剥いでいく。後ろ足の関節の部分に紐を引っ掛けて吊り下げる。
ナイフと拳を使って、どんどん皮を剥ぎ取る。何だかピチピチの服を苦労して脱がしている感じ。
皮を全部剥ぎ取ったら、今度は首を切り落として、内臓を取り出す。お腹の辺をにスーッとナイフで切って、手を突っ込んで中身を引っ張ってくる。
腸だろうか?おじさんが口から空気を吹き込むと、長細い風船の様に空気が入る。そして腸に溜まっている物を外へ押し出す。
今度は肺を手にし、肺から出ている腸なのか何なのか、細長い風船のような管から空気を吹き込むと、肺の大きさが3倍ぐらいに脹らんだ!もうびっくり。
横で興味津々で写真を取りまくっていた私の為に、おじさんが再び披露してくれた。そして私は大喜び。体って上手い具合に出来てるもんなんだね〜。関心しちゃった。

内臓も全部取り出してできあがり。肉屋にぶら下がっている物と同じ状態になった。
ここまでやってくれたおじさんにお茶とお菓子を振舞う。お疲れ様です。


 日本のスーパーで買って来ていたあの肉のかけらは、こんな風にして作られていたんだ、と私たちが食べている肉の出所をはっきりと理解した。パックされた小さな肉の塊しか見たことが無いというのは、結構悲しいことかもしれない。
この後出かけて夜部屋に戻る時に、メーメー鳴く声が聞こえた。今日の羊は長男の。そして今日家族の羊がやって来たらしい。屠る前は食べ物を与えず、水を沢山飲ませたほうがいいと言っていたから、お腹をすかせているのかも知れない。


 この日のお昼は早速羊肉がたっぷり入ったカリヤという煮込み料理。明日の為のお菓子もまだ作っている。お菓子を作りながらも、スパイスや玉ねぎに漬け込んで味付けした肉を串に刺してケバブも作る。中庭でサッと炭で焼いて、出来立てを皆と一緒にミントティーとパンで食べた夜ご飯。結構お腹がいっぱいだったけれど、その後にムフォウーラと呼ばれる羊の首の肉を蒸した料理が出てきた。これにクミンと塩をふりかけて食べる。これまた美味しくてペロリと平らげてしまった。

 12日当日。朝食は菓子パンに、アラガァイフ ラァセル(揚げ菓子)、ムスクゥツァ(スポンジケーキ)といつもより豪華だったものの、いそいで最後の掃除にとりかかる。水を使って床を磨き、お菓子を大皿に盛り付け、お客様用のチャイカップやポットを銀のプレートに並べる。お香をたいたら準備完了。
子供は今日の為に用意された新しい服を着せてもらい、女性も綺麗なカフタンに着替えてお化粧をしたりする。


犠牲祭当日

 昨日の羊より少し大きい家族の羊。今日は家の前で屠る。お向かいさんも家の前に羊を吊るして内臓を取り出していた。あちこちから羊の鳴き声が聞こえてくる。この羊も、自分が今からどうなるのかを知っているのかな。
昨日のおじさんがやって来て、また指示を出す。昨日と同じように喉元を切り、玄関に吊るしながら見事な手さばきで羊をさばく。その間にも、近所の人や、親戚が挨拶をしに来る。白いジュラバを着た人達がモスクの集団礼拝から帰って来る。子供も新しい服に身を包んで歩き回っている。嫌がる羊を肩に乗せて運んでいる人もいる。家の中では、お昼の準備に大忙し。準備をする女性たちはお洒落どころではなく、普段の格好で大家族の食事の用意に追われている。

 昼食は肝と心臓のケバブとミントティー、肉のオリーブ煮込みにオレンジとりんごのデザート。肝は軽く炭で焼いて薄皮を取る。そして薄い油の皮で一口サイズに切った肝を包んで、串に刺してから炭で焼く。焼く時は油のせいで凄い炎が出るけれど、焼きあがった後は、もう白い油は肝に付いていない。肝類は苦手だけれど、なぜか今日の肝と心臓のケバブはとても美味しい。鮮度が違うからかな?

 
昼食の後片付けが終わると、普段着で家のことをやっていた女性も綺麗な服に着替えて、親戚や両親の家に出かけて行った。私も知り合いの家へ出かけた。そのお宅では、私が見ただけでも3種類のケーキと7種類のクッキーが用意されていた。勿論、全部手作り。天井からは2頭の皮を削がれた羊がぶら下がっている。私が見た羊たちは皆、立派な玉玉が着いていた。雌の羊は使わないの?と聞くと、雄の方が大きくて立派だから皆雄の羊を求めるそうだ。道のあちこちに血を洗い流した跡と完全に洗い流されていない血が残っている。何となく血の臭いもするけれど、肉を料理するいい臭いもただよっている。夜ご飯は内臓を煮込んだもの。昨日から肉、肉、肉。きっと当分続くんだろうな。

 犠牲祭2日目、朝から男性総出で肉の解体を始める。木の株のようなまな板の上で、大きな鉄(?)の包丁をふりあげている。他にも普段は使わない包丁セットのようなものを使って、切っていく。肉を解体しつつも、串焼きを作っては食べている。何せ、食べても食べてもまだあるのだ。
羊の脳みそは、溶き卵と一緒に焼いて、スパイスで味付けして食べる。
どの部分か良く分からないけれど、内蔵を腸(多分)でグルグル巻きにしたコルデスという物も作っていた。白い油の塊も小さく切って、ホブスドアッズ(モロッコピザ)やハリラ(モロッコ風スープ)に使う。骨も肉と一緒にハリラに入れて煮込んだり、骨の髄も取り出して食べる。足も頭も食べる。毛皮はマットにすし、捨てるところなんて無い気がする。

 肉はすぐに食べきれないから、ニンニクと塩、スパイスを刷り込んで屋上に干しておく。この肉を「カッディッドゥ」と言うらしい。4時間ぐらい水に浸しておいて、タジンに入れて食べる。ちょっとスパイシーな味。
毛皮は、内側に粗塩のような塩と何かを混ぜて擦り込んで、干していた。乾いた毛皮の内側を、軽石のような木で擦ってきれいにする。すると、どこの家でも見かける羊皮マットの出来上がり。


 犠牲祭は3日間。それが終わると、違う町に住んでいる家族は帰ってしまうし(バスはとても込み合うので、旅行中の人は注意!)、ソファーのカバーも普段の物に取り替えられる。けれど羊肉料理はまだまだ続く。


上記の内容は私が初めて体験した犠牲祭。これが二度目となると、好奇心も失われて羊を屠る時はやはり目を背けてしまう。
お客さんが来ると、お茶とお菓子、そして串焼きを振舞っていた。


>...ラァラマ(婚約式)

羊市場
ナイフと拳を使って皮を剥ぐ。
腸かな?空気を入れて中身を押し出している。
肺を取り出す
道端で屠られる直前の、家族の羊。
肉の解体
肝を油で包んで串焼きにする。
屋上で干されている羊の毛皮。
天井から吊るされた羊の肉。
ケバブの炭焼き
解体開始
羊の脳みそ
腸らしき物でぐるぐる巻きにされた内臓。
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